地方への逆流 韓国、法科大学院の誕生で(産経新聞)

 【隣の司法改革】(下)

 韓国中部・忠清北道にある国立忠北(チュンプク)大法科大学院(ロースクール)。ほかの法科大学院同様、客室乗務員や警察幹部、記者と、院生らの経歴はバラエティーに富む。中には脱北者の院生もいる。ただ、出身校ではある偏りが出た。

 ソウル大に高麗(コリョ)大、延世(ヨンセ)大といった韓国の上位3校をはじめ、入学者の大半をソウルの名門大出身者が占めたのだ。忠北大の人気は高く、今年度入学の倍率は前年度を上回る4・6倍に上った。

 一期生の李東勲(イ・ドンフン)さん(29)もその一人で、この地方で生まれ育ったが、法学部で有名なソウルの成均館(ソンギュングァン)大に進学した。「勉強ができる子はソウルの大学に進学するのが常識だった」

 韓国の首都ソウルへの一極集中は日本以上にすさまじく、人口の半数が首都圏に暮らす。特に有名大のほとんどがソウルに集中している。それが法科大学院の誕生で地方への逆流という現象が起きている。

 《日本の法科大学院では、東京など大都市の院への志願者の集中が大きな問題となっている。74校の8割が定員割れだが、そのほとんどが地方校。入学者ゼロという学校まで現れた》

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 韓国では、なぜ逆流が起きたのか。院生らに聞いてみると、大学院ごとに専門分野を特化したことに理由の一つがあった。

 例えば、高麗大は国際法務、医学部で有名な延世大は医療・科学技術関係法など。流通拠点にある釜山(プサン)大は金融・海運通商に関する法で、政府がIT企業誘致に力を入れる地域にある忠北大はIT法だ。

 忠北大法科大学院生の任孝鎮(イム・ヒョジン)さん(28)は4年間ゲーム制作会社に勤務し、ネットやゲームに関する法の規制を実体験したことが、入学の理由だった。

 「オンラインゲーム開発は韓国でも数少ない世界をリードする分野。法律知識を身に付ければ、紛争解決の世界基準を示すこともできる」

 法科大学院教授の一人は「例えば医療事故裁判など高度な専門知識なしでは解決できない問題が増加している」と専門特化の必要性を語る。国際法務が専門の高麗大法科大学院教授は「グローバル化のなか、国際法の知識に加え、韓国法を英語や日本語で説明できる能力が求められている」と指摘する。

 地方の国立大が人気な理由のもう一つが学費の問題だ。少数精鋭の授業環境を保証するため、ソウルの私大では、年間の学費が旧来の法学部の倍以上の2千万ウォン(約160万円)に上る。ただ、地方の国立大が安いといっても1千万ウォンはかかり、法科大学院教授は「院生らの学費負担をどうしていくか、社会全体が悩まなければいけない課題だ」と話す。

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 今でこそ順調な滑り出しにみえる韓国の法科大学院だが、開校当初はどの学校でも「法学部出身でなくても授業についていけるのか」「従来の司法試験合格者に比べ劣るとみられるのではないか」と不安を口にする院生が後を絶たなかったという。

 全国の法科大学院の代表らが集う会議でも「司法試験に代わる新しい弁護士資格試験の中身はどんなものか」など、将来の不安に話題が集まる。

 「院生の精神面のケアに力を注いでいる」という忠北大法科大学院の盧秉昊(ノ・ビョンホ)院長はこう指摘する。

 「弁護士資格試験が旧来の詰め込み式ではなく、実際的な知識を問い、十分な合格者数が保証されるものになるかに成否がかかっている。でなければ、新制度が有名無実化しかねない」

 その答えが出るのは最初の修了生が社会に旅立つ2年後。そのとき日本の法科大学院はどう変革しているのだろうか。(桜井紀雄)

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